西洋医学について
このページでは、西洋医学に関する妊活・不妊症専門用語をまとめました。妊活・不妊症に関する専門用語は、聞きなれない単語が多く大変ですが、検査やホルモン値、誘発剤などご自身の身体に関係することばかりです。不安や疑問に思うことが出てきた時に、皆さんの参考になることがあれば嬉しいです。
妊活・不妊治療基礎
不妊症
以前は「夫婦が妊娠を希望し性生活を行っているにもかかわらず、一定期間を過ぎても妊娠しない場合をいう」と定義されていました。この一定期間には1年から3年という幅がありました。
2009年にWHOより「一年以上」と定義されたことを受けて、2015年より日本産婦人科学会でも「1年以上、女性が高齢の場合には半年を目安に検査だけでも行う」ようにと、一歩進んだ内容に変更されました。これらを踏まえまして、1年を目安に、女性が35歳以上のご夫婦は、半年を過ぎても妊娠に至らない場合にはお早めに病院にて検査を受けていただくか、当院にご相談ください。
ART
高度生殖医療、生殖補助医療技術のことで、体外受精、顕微受精、胚移植、受精卵や卵子、精子の凍結保存など全般を指します。全国で体外受精、顕微授精を行っている施設は600近く登録されています。1987年に世界で初めて、1983年には東北大の鈴木雅洲先生が日本初の体外受精による妊娠、分娩が成功してからARTの発展は続いています。2017年のART出生児は16人に1人とされており、治療数も年々増えています。しかし、日本における体外受精出生率は世界的には非常に低い成績です。控えめな日本人の国民性もあるとの意見もありますが、当院でも正しい知識と有効な手段で妊娠出産へのサポートをさせていただきたいと考えております。
基礎体温(BBT)
生命維持に必要な、最低限なエネルギーしか消費していない状
態でも体温のこと。4~5時間以上の睡眠後、起床時の安静な
状態で測定することが望ましいです。毎日記録したものをグラ
フにする
ことで、ご自分のからだの状態を観察することが出来ます。体
温の緩急によって排卵があったかどうかの指標になりますが、
BBTだけでは正確な排卵日を予測することはできません。体温
は、運動、食事、ストレス、基礎代謝、就寝中の環境などで変
動しやすいです。就寝中に鼻呼吸ができずに口が空いてしまう
と、正確な体温が測りずらいことがあります。
頸管粘液
子宮頸管内膜の腺から分泌される粘液のこといいます。エストロゲン分泌量の増加とともに頸管粘液の量は増加し、排卵期に最大となります。通称「ノビオリ」と言われるような、無色透明で10センチ以上伸び、量が多めのおりものが理想的です。高温期には、濁った少量の液状に変化します。排卵誘発剤のクロミッドにより、頸管粘液が少なくなることがありま。そのような場合には主治医の先生に相談することをおススメいたします。
排卵障害
卵巣で成熟した卵胞は、卵巣表面で排卵の準備をします。時期が来ると卵胞が破裂し、卵子や卵胞液が排出されることを排卵といいます。しかし、ホルモンに影響がある病気やストレス、肥満や痩せなどによって卵子の成長、排卵出来ないことがあります。PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などにより卵巣の表面が硬くなり肥厚していると、卵胞の発育や排卵が抑えられてしまいます。他にも、LUF(黄体化非破裂卵胞)下垂体腫瘍、精神疾患などによる高プロラクチン血症、卵巣機能の低下、卵巣不全などが原因として考えられます。月経がある=排卵があるとは限りません。基礎体温が2相性になっていない場合や、月経不順が見られる場合には、専門医療機関への受診や当院にご相談ください。
卵管障害
女性側の不妊症の原因の約3割を占めるのが卵管障害です。卵管の先端にある卵管采で、排卵時のピックアップを行い、卵管膨大部で受精した受精卵は卵管を通って子宮に着床します。卵管障害が疑われる場合には、ピックアップができない、受精卵を子宮まで運搬できないなどの不妊の原因となります。性器クラミジア感染症による卵管狭窄や閉塞は、卵管障害の原因のうち6割で最も多くなっています。クラミジアによる自覚症状は確認されにくく、不妊症の検査や妊婦検診時の検査でわかることがほとんどです。他には、頸管由来の感染症によるもの、腹膜炎、子宮内膜症、手術などによる卵管周囲、卵管采周囲の癒着が卵管障害に影響しています。
ピックアップ障害
卵巣内で成熟した卵胞より送り出された卵子が、腹腔内に放り出されることを排卵といいます。腹腔内に放り出された卵子が、卵管采に捕獲されることをピックアップと呼びます。不妊症の原因がわからない場合の多くは、ピックアップ障害とも言えます。卵管障害と重複しますが、クラミジア感染症や子宮内膜症などによる卵管采周囲の癒着による場合と、卵巣嚢腫やチョコレート嚢胞など卵巣側の問題による場合が考えられます。ピックアップは妊娠におけるブラックボックスです。排卵が確認されていたとしても、ピックアップを確認する術はなく、毎回ピックアップができているかも不明で、左右でも機能差があると言われています。体外受精の成功という形でしか、ピックアップ障害の証明が出来ないのが現状です。
受精障害
問題がないとされている精子と卵子でも受精しない状態です。受精障害には男女ともに影響する抗精子抗体と、女性側に抗透明帯抗体を認める場合があります。女性側の抗精子抗体の値によっては、AIH人工授精やIVF体外受精、ICSI顕微授精にそれぞれステップアップを勧められます。男性側にも、運動能の低下や卵子の透明帯を通過できないなどの原因が考えられます。
着床障害
子宮内の異常により良好な受精卵を移植しても、着床せず妊娠が成立しない状態です。着床したかどうかは、hCG陽性反応が確認できたかどうかで判断します。受精卵の問題として、染色体異常や受精卵の質が考えられます。子宮側の問題として、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、慢性子内膜炎、卵管留水腫、子宮の形態異常などがあります。黄体機能不全などにより子宮内膜が着床に適した状態にならないことも考えられます。
ホルモン関連
GnRH
ゴナドトロピン放出ホルモン。
視床下部から分泌され、脳下垂体に働きかけて卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体ホルモン(LH)など性腺刺激ホルモンの分泌を促すします。
FSH(卵胞刺激ホルモン)
下垂体から卵巣に向けて分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)のひとつ、卵胞刺激ホルモン。
脳下垂体から産生・分泌され、卵巣に働きかけて卵胞の形成・発育を促します。卵巣機能が低下するとFSHは高くなる傾向があります。
LH(黄体刺激ホルモン)
下垂体から黄体に向けて分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)のひとつ、黄体刺激ホルモン。
脳下垂体から生産・分泌され、黄体に働きかけて、黄体の形成・発育を促します。LHサージにより排卵が促されます。
E2(エストラジオール)
卵巣から分泌されるホルモン。エストロゲン(卵胞ホルモン)ひとつのなかでももっとも活性が強く、閉経前に測定されるエストロゲンの主な成分。月経後の子宮内膜の増殖と肥厚、排卵期の頸管粘液の分泌を促します。骨量の維持などにも関与します。
P4(プロゲステロン)
黄体ホルモン。黄体から分泌されるホルモン。子宮内膜を着床に適した環境に整え、基礎体温の上昇に作用します。
PRL(プロラクチン)
下垂体から分泌され、乳管に作用するホルモン。乳児に乳頭を吸われることによりプロラクチンの分泌が促され、乳汁生産を増加させます。また産後には、卵巣機能を抑えて月経が起こらないようにします。
AMH(抗ミューラー管ホルモン)
発育卵胞、前胞状卵胞から分泌されるホルモンです。血液中のAMHの検査値から卵巣の予備能を知ることができると言われています。年齢によって基準値が異なり、同じヒトでも周期によって多少前後することがあります。
TSH
甲状腺刺激ホルモン
視床下部から分泌されるTRH甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの指令を受けて、甲状腺ホルモン(T3トリヨードサイロニンT4サイロキシン)の分泌を促す橋渡し役をしています。
T3トリヨードサイロニンT4サイロキシン
甲状腺から分泌されるホルモン
すべての代謝を亢進させる働きがあります。基礎代謝量はもちろん、脳の活動、飲食物の消化吸収、心臓や血管、卵胞の成長などに影響します。
hCG
ヒト絨毛(胎盤)性ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)
非妊婦の場合、血中hCGは0.7mlU/ml以下。妊娠すると妊娠4週ごろより尿中にも検出され、妊娠検査薬に用いられます。妊娠10~12週ごろに最高値になります。